みなさんはHEMS（ヘムス）という言葉をご存知でしょうか。新しく住宅を購入する際にこの言葉を聞かれたという方もいらっしゃるかもしれません。

エネルギーの効率的利用が求められる時代。無駄な電力消費をなくすことは電気代の節約にもつながりご家庭にとってもおトクです。そのために、今注目されているのが、このHEMS（Home Energy Management Systems）という技術なのです。

HEMSは、エネルギーを賢く管理し、快適性を高める画期的なシステムです。家庭のエネルギー利用を最適化し、環境にも配慮する、それがHEMSの目的です。このテクノロジーを取り入れることで、我々の生活がより便利で、エコな未来に近づくことができます。

今回のコラムでは、HEMSの機能や利点、そして注意すべきポイントなどを詳しく解説していきます。

HEMSとは？

HEMS（Home Energy Management Systems）は、家庭のエネルギー管理を効率化し、電気料金を節約するためのシステムです。ご家庭の各種機器や設備の電力消費をリアルタイムでモニタリングし、適切な制御を行います。

例えば、ご家庭に人がいない時間帯にはエアコンや給湯器を節電モードに切替えることで無駄な電力消費を抑えます。また、太陽光パネルや電気自動車（EV）との連携により、再生可能エネルギーの最大化や電力の貯蓄・分配も行えます。

HEMSの魅力は、その利便性とエネルギー効率の両立にあります。家庭の電力使用状況を的確に把握し、最適な運用を行うことで、電気料金の削減だけでなく、地球環境への貢献も実現できるのです。

家庭のエネルギー管理に興味のある方や、より快適で持続可能な生活を送りたい方にとって、HEMSは見逃せないテクノロジーと言えるでしょう。

HEMSができること

HEMSには、以下のような機能が備わっています。

リアルタイムモニタリングHEMSは家庭内の電力使用状況を常に監視し、データを収集します。これにより、どの機器がどれだけの電力を消費しているかを可視化することができます。
エネルギー効率化HEMSは電力消費のピークタイムを把握し、電力を効率的に使用するためのアドバイスや制御を提供します。例えば、ご家族が外出している間は冷暖房機器を最適な設定に調整するなど、無駄な電力消費を防ぎます。
再生可能エネルギーの最大化太陽光発電設備や風力発電装置と組み合わせることで、HEMSは自家発電の最適化を行います。再生可能エネルギーを最大限活用することで、家庭のエネルギー自給率を高めます。
電気自動車（EV）との連携HEMSは、EVの充電スケジュールを最適化し、再生可能エネルギーを活用して充電することが可能です。これにより、電気自動車の利用コストを抑えつつ、エコな移動を実現します。
快適性の向上HEMSは、快適性を損なうことなく、エネルギー効率を高めることができます。例えば、適切な温度管理を行いながらエネルギーの無駄を省くことができます。

HEMSは家庭のエネルギー管理に革新をもたらすテクノロジーであり、従来の家庭における電力利用のあり方を変える可能性を秘めています。その機能やメリットを深く理解していくことで、よりエネルギー効率が高く安定的なライフスタイルを実現する手段として注目されています。

スマートメーターとHEMSの連携

HEMSの利用に不可欠なのがスマートメーターです。スマートメーターは、情報通信機能を備えた高度な電力量計です。

かつて電気料金の計測は、検針員が各家庭を訪れて電力量計（機械式メーター）を調べてから行われていました。しかし、スマートメーターは消費電力量を直接電力会社に送信するため、検針員による訪問が不要となりました。

HEMSとスマートメーターとを連携させることで、スマートメーターが計測するご家庭の電力使用量をHEMSへリアルタイムに送ることができます。したがって、スマートメーターからのデータを基にHEMSによって電気の使い方が自動的に可視化され、節電に役立てることが可能となります。

HEMSの普及を目指す背景

HEMSは、日本政府も普及を進めてきたシステムですが、その背景を見てみましょう。

まずは、地球全体の課題である温室効果ガスの削減があります。日本では2021年10月に地球温暖化対策計画が閣議決定され、そこでは2030年までに46%の温室効果ガス削減を達成することが掲げられています。

参考：環境省地球温暖化対策計画（令和３年10月22日閣議決定）

火力発電など、発電に燃料を使用する場合、多くの二酸化炭素を排出することになります。そこで、HEMSのような電力の効率的な使用を支援するシステムは、節電により発電量を抑える結果として、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を減らすことに間接的に貢献できます。

政府はGX（グリーントランスフォーメーション）などを掲げ、環境に配慮した効率的なエネルギー社会を目指していますので、HEMSもその実現にとって重要なシステムの一つと言えます。

また、HEMSなどにより電力使用の効率化を実現することで、そもそもの発電にかかるコストを削減することにもつながります。火力発電所などの発電設備は、電力不足を引き起こすことのないように、最大の電力需要を想定しています。そのため、実際には電力需要がピークに差し掛かっていない時間帯でも、その運用コストは高く、無駄が生じてしまいます。

HEMSが各ご家庭に導入され普及されることで、電力需要の時間帯を明確に把握することや、電力消費時間帯のシフトをうながすことにより、発電施設を安定的に運営しつつコストを低くしていくことができます。

環境への配慮につなげ、電力の低コストかつ安定的な供給を目指すために、HEMSはその普及が進められているのです。

HEMSの仕組みと家庭への導入方法

ここからは実際に、HEMSがどのような仕組みになっているのか、また導入のステップをご紹介していきます。

HEMSは、以下のような仕組みで動作しています。

まずは、電力消費量を計測できるようなHEMS対応のユニットを配電盤やコンセントに設置します。設置された測定器からは電力使用状況がインターネットを通じて各利用者や電力会社へと共有されます。

共有された情報はパソコンやスマホから閲覧でき、これらの端末や機器から家電製品を遠隔で制御することもできます。

なお、HEMSの導入には、先ほどお伝えしたように電力使用量を計測するスマートメーターが必要です。加えて、HEMSに対応している分電盤なども必要になります。

HEMS導入による補助金について

HEMSの導入には対応するユニットや電化製品を取り揃えていく必要がありますが、一部政府や各自治体からの補助金も出されています。経済産業省ではZEHの補助金事業の一つとして次世代HEMS実証事業を実施しています。

こちらは正確にはHEMSへの直接的な補助金ではなく、政府の補助は2011年と2013年の実施以降は打ち切られています。これは、この時の予算目的が東日本大震災復興であったため、使途厳格化を受けて目的との齟齬がでてしまったためです。しかし、国は引き続き、実証事業などによりHEMSの普及に対して補助を行っています。

また、各地方自治体にも、各ご家庭のHEMS導入の補助金を設定している例があります。HEMS導入を検討されている場合には、国やお住まいの地方自治体から補助金がないかチェックしておきましょう。

HEMSの導入コスト

では実際に、HEMSの導入にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。導入機器や工事の内容から幅はありますが、平均でも10万円～30万円ほどかかります。HEMS機器自体が10万～15万円、分電盤には2万～3万円、そこに施工費用が入ってくることとなります。

工事については施工会社にしっかりと見積もりを出してもらってから判断するようにしましょう。

また、HEMS導入においては家電製品自体がHEMSに対応している必要もあります。システムを入れても家電製品から消費電力のデータを送ることができなくては意味がありません。

最近の家電製品はHEMS対応のものが多いですが、HEMS導入に合わせて家電製品を買い替える場合には、その買い替え費用が掛かることになります。家電製品はまとめて買い替えると大きな出費になりますので、導入に向けて少しづつ買い替えるなど計画的に進めて、一度の負担を分散させるようにしましょう。

よりスマートで環境にやさしい生活へ

お伝えしてきましたように、ご家庭の電力消費を見える化し、管理可能にしてくれるHEMSは、地球環境にやさしく電力供給の安定にも貢献し、未来のエネルギー利用のスタンダードになることが期待されるシステムです。

スマートで環境にやさしい生活を送るためには、知識を身につけることが重要です。HEMSを導入したいと考えている方は、少しずつ準備を進めていくことをおすすめします。まずはご家庭の電力消費を把握し、効率的なエネルギー利用に向けて着実に歩みを進めていきましょう。

これからもエネルギーに関する情報を発信していきますので、引き続きお楽しみに！

コラム

住宅とエネルギー

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