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V2Bとは?法人が知るべきV2Bのメリットと導入のポイント

EVと暮らしのエネルギー

V2Bとは?法人が知るべきV2Bのメリットと導入のポイント

2025年10月31日 更新

近年、電気自動車(EV)の普及は個人利用だけでなく法人利用にも広がりつつあります。営業車や社用車をEVに切り替える企業も増え、環境対応だけでなくランニングコストの面からも注目されています。

こうした流れの中で、新しいキーワードとして出てきているのが「V2B(Vehicle to Building)」です。

V2Bとは、EVに搭載された大容量バッテリーを、ただ移動手段として使うだけでなく、会社の建物に電力を供給する仕組みのことを指します。これにより、オフィスビル等の電力を補うことができ、電気代の削減や非常時のバックアップ電源としての活用が可能になります。

また、昨今のエネルギー事情を考えると、V2Bの重要性はさらに高まっています。

電気料金の高騰、脱炭素化へのプレッシャー、災害時の事業継続(BCP)など、法人が直面する課題は少なくありません。

そうした中で「すでに導入しているEVをもっと有効活用できる方法」として、V2Bは大きな可能性を秘めています。

このコラムでは、V2Bの基本から他の仕組みとの違い、法人が得られるメリットや実際の事例までをわかりやすく整理し、事業の選択肢として検討できるよう解説していきます。

V2Bとは?

V2B(Vehicle to Building)とは、電気自動車(EV)のバッテリーに蓄えられた電力を、建物へ供給する仕組みのことです。 EVは走行するために大容量のバッテリーを搭載していますが、その電力を移動以外にも活用できる点に大きな特徴があります。

例えば、EVを活用すれば、電気の使用が多く料金が高くなる時間帯を避けて充電し、必要なときに放電することで、契約電力を抑えて基本料金を節約できます。

また、時間帯別料金プランを契約している法人の場合、料金が安い時間にEVを充電し、高い時間に放電することで、実際に使った電気の従量料金も削減可能です。

また、災害や停電といった非常時には、社内のバックアップ電源としても利用できるため、事業継続計画(BCP)の観点からも価値があります。

ここで重要なのは、V2Bは単なる「EV充電の逆利用」ではなく、法人の電力マネジメントの一部として組み込める仕組みだということです。

ピーク時間帯にEVの電力を使い、夜間の安い電力で再充電するといった活用方法を組み合わせれば、コスト効率の高い運用も可能になります。

つまり、V2Bは「EVを持っている」こと自体を、事業に資する資産活用へと進化させる考え方と言えるのです。

V2Hとの違い

V2Bを理解する上で、よく比較されるのが「V2H(Vehicle to Home)」です。

V2Hはその名の通り、電気自動車のバッテリーから家庭(Home)に電力を供給する仕組みを指します。停電時の家庭用バックアップ電源や、電気代の安い夜間に充電して昼間に使う節約術などで活用されています。

一方、V2Bはそのスケールを法人向けに拡大した仕組みです。家庭ではなく、オフィスビルなどの「建物(Building)」に電力を供給します。建物全体の消費電力は家庭よりはるかに大きいため、V2Bでは「複数台のEVを連携させて建物に電力を供給する」といった運用も想定されます。

つまり、

  • V2H:家庭向け、小規模、個人の生活インフラを補助
  • V2B:法人向け、中〜大規模、事業活動やBCPに活用

という違いがあります。 「家庭で便利だった仕組みを、法人がより大きなスケールで使う」イメージを持つとわかりやすいでしょう。

V2Gとの違い

もうひとつ、V2Bとよく比較される仕組みに「V2G(Vehicle to Grid)」があります。 こちらは 電気自動車から電力系統(Grid)へ電気を供給する仕組み を指します。

電力系統に直接つながるため、V2Gは設置する建物を超えて、社会全体の電力需給を調整する役割を担うことができます。再生可能エネルギーの発電量が余っているときにはEVに充電し、逆に電力が不足しているときにはEVから電気を戻すことで、電力の安定供給に寄与します。

地域の電力系統と密接に関わるのがV2Gの特徴です。

一方、V2Bは対象を設置する建物に絞り込み、自社の建物のエネルギー最適化をする仕組みです。

建物の電力使用が大きい事を活かし、「自社の電気代削減」や「自社の事業継続性確保」に直結する点が大きな違いです。

まとめると:

  • V2G:系統(グリッド)へ供給 → 社会全体の電力安定化に貢献
  • V2B:建物(ビル)へ供給 → 自社のコスト削減・BCP強化に活用

V2Bのメリット

法人がV2Bを導入することで得られるメリットは、大きく分けてコスト削減、事業継続性の向上、そして企業価値向上の3つです。

1. 電気代の削減

V2Bの最大のメリットのひとつは、電力のピークカットによる電気料金削減です。

企業が使用する高圧電源では、基本料金が「年間で最も電力を使った時間帯の平均電力量(kW)」を基準に決まります。

そのため、一度でも使用電力量がピークに達すると基本料金が高くなり、無駄なコストが発生してしまいます。

V2Bを活用すれば、電力需要の多い時間帯にEVのバッテリーから電力を供給し、自社の消費電力(kW)を下げることが可能です。結果として、基本料金の抑制や電気料金全体の削減につながり、経済的なメリットが非常に大きくなります。

2. 事業継続計画(BCP)への貢献

停電や災害時にもEVの電力を活用できるため、事業継続性を確保できます。オフィスビル等での最低限の機能を止めずに運営できる点は、特に災害リスクの高い地域の法人にとって大きなメリットです。

3. 環境・CSR価値の向上

再生可能エネルギーと組み合わせることで、脱炭素化への取り組みやCSR活動にもつながります。顧客や取引先に対して、環境意識の高い企業であることを示すことができ、ブランド価値の向上にも寄与します。

4. 将来的な収益機会の拡大

複数のEVを所有する法人では、調整力市場等との連携も可能になります。社会全体の電力需給に参加することで、新たな収益機会を得る可能性もあります。

V2Bの歴史と事例

V2B自体はV2X技術の発展の中で2010年代に概念化され始め、少なくとも2018年には国内で実証事例が報告されています。業務用EV導入が広がるのに合わせて、法人ビル・オフィス・工場等で使われるようになりました。

ここから各民間企業のV2Bの取り組みを一部ご紹介していきます。

NTT西日本 × NTTスマイルエナジー × 日産自動車

NTTグループでは、2018年からV2Bの取り組みを開始。

オフィスビルに駐車したEV(電気自動車)から電力を供給することで、CO₂削減とピークカットを同時に実現しました。

これにより、電力コストの削減と非常時の電源確保という二重のメリットを検証。さらに2030年までに全社の車両をEV化する方針を掲げており、V2Bを軸とした脱炭素経営への転換が進んでいます。

参考:EV(V2B)を活用したオフィスビルでのエネルギーコスト・CO2削減トライアルの開始について | NTTスマイルエナジー

ヤオコー川越的場店 × 伊藤忠商事 × アイ・グリッド・ソリューションズ

スーパーマーケット「ヤオコー」では、店舗の駐車場にEV蓄電池を導入。日中のピークタイムにEVから店舗設備へ電力を供給し、ピークカットと電気料金の削減を実証しました。

食品小売業のような電力使用量の多い業種にとって、V2Bは省エネ施策として現実的な選択肢となっています。

参考:太陽光発電と宅配用EVをAIで最適制御する エネルギーマネジメントの実証実験を開始 | 株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ

横浜スマートシティプロジェクト

横浜市では、V2Bとリチウムイオン蓄電池システムを組み合わせた充電ステーションを設置。オフィスビルのテナントやカーシェアサービスと連携し、地域全体でのエネルギーマネジメントを推進しています。

V2Bを単なる節電手段ではなく、新たなビジネスモデル(カーシェア × 電力融通)として活用する良い例です。

参考:V2B+Liイオン蓄電池を充電スタンドとして |古河電気工業株式会社

V2Bの可能性と次の一歩

V2Bは、法人が保有する電気自動車を単なる移動手段から、事業に資する資産へと進化させる仕組みです。 電気代削減や災害時のバックアップ、CSR・脱炭素対応など、事業にとって多くのメリットが期待できる一方で、導入には設備投資や運用体制の整備といった課題もあります。

しかし、早めに取り組むことで、他社との差別化やコスト効率化といったメリットを先取りすることが可能です。

まずは自社のEV保有状況や電力使用状況を確認し、小規模でも試験的にV2Bを導入することから始めるのが現実的なステップです。

EVを「走るだけのクルマ」から「事業を支えるエネルギー資産」へと活用するV2Bは、これからの法人エネルギーマネジメントの新しい選択肢として注目されています。

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