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急速充電をもっとおトクにする方法 〜SOC(充電残量)を知るだけで、同じ時間でも“入る電気の量”が変わります〜

EVの充電と設備

急速充電をもっとおトクにする方法 〜SOC(充電残量)を知るだけで、同じ時間でも“入る電気の量”が変わります〜

2025年11月28日 更新

外充電、なんとなくで使っていませんか?

EVの急速充電器は「時間課金型」が主流です。つまり、30分なら30分という“時間”に対して料金が決まる仕組み。

ですが実は、同じ時間・同じ料金でも、充電できる電力量は大きく変わることをご存じでしょうか?

その差をつくっているのが、SOC(充電残量)と充電速度の関係

EVのバッテリーは、残量が少ないときほどスピーディーに電気が入ります。逆に、残量が増えてくると保護制御が働き、充電速度がどんどん落ちていきます。

そのため、急速充電へ行くタイミングによって、「どれだけ走れる距離が増えるか」が大きく変わるのです。

本コラムでは、外充電・急速充電をよく使うEVオーナー向けに、 “もっとおトクで効率的な”急速充電の使い方をわかりやすく解説します。

EVの急速充電、普通充電との違いについてはこちらの記事をご参考ください。

EVの急速充電は「SOC」でスピードが大きく変わる

EVを外で充電すると、「今日はなんだか充電が遅いな…」と感じたことはありませんか? その主な理由のひとつが、SOC(State of Charge)=バッテリー残量です。

SOCとは?

SOCは、“何%充電されているか”を示す指標で、スマホのバッテリー表示と同じイメージです。

  • 20% → かなり減っている
  • 80% → そろそろ満タンに近い
  • 100% → 完全に満充電

このバッテリー残量によって、急速充電のスピードが大きく変わります。

EVにはSOCの他にSOHという指標もあり、どちらもEVを利用していくには大事な指標です。SOC、SOHについて詳しい解説はこちらをご確認ください。

SOCが低いほど充電が速い理由

EVのバッテリーは安全性と寿命を守るため、残量が多くなるほど“ゆっくり充電する”ように制御されています。

そのため、

  • SOCが低いとき(10〜40%) … バッテリーが充電器の最大出力を受け取りやすく、スピーディーに充電できます。ただし、車両の仕様によって最大充電速度に制限があるため、充電速度は車両側の上限に依存します。
  • SOCが高いとき(70%以上) … バッテリー保護のため電流が制限され、充電が遅くなる

という現象が起きます。

スマホと同じ仕組み

イメージとしては、スマホがほぼカラの時は一気に充電され、満充電に近づくと段々ゆっくりになるのと同じです。 EVもまったく同じで、減っているときほどスムーズに電気が入るというわけです。

時間課金型の急速充電では「充電速度=おトク度」

多くの外部急速充電器は、時間課金型で料金が決まっています。 たとえば30分充電すれば30分分の料金がかかる、という仕組みです。

ここで注目すべきは、同じ時間でも充電できる電力量はSOCによって大きく変わるという点です。

例えば、次のようなケースを考えてみましょう。

  • SOC 20%での急速充電
  • SOC 70%での急速充電

どちらも同じ30分充電としても、入る電力量は全く違います。

SOCが低い場合は充電器の出力をフルに使えるため、電気がぐんぐん入り、時間あたりのコスパが最大化されます。

一方、SOCが高い場合は電流が制御されてしまい、30分充電してもほとんど電気が入らないこともあります。

外充電を効率的に使うためには、充電残量が低いタイミングで急速充電を使うことが、料金あたりに入る電気量を最大化するコツになります。

じゃあ、どのタイミングで急速充電するのが効率的?

急速充電をよりお得に使うための結論はシンプルです。

◎ SOCが低い状態で急速充電に行くのがベスト

多くのEVでは、SOC 10〜40%前後のときが充電速度が最も速く、時間単価あたりの充電量が最大化されやすいゾーンです。 このタイミングで充電すれば、同じ30分でも、より多くの電気を入れることができ、走行可能距離も大きく伸びます。

逆にNGパターン:残量が多いのに急速充電へ行く

残量70%以上の状態で急速充電を利用すると、充電速度が大きく落ちます。 同じ時間を使っても、ほとんど電気が入らないことがあるため、料金に対しての効率が非常に悪くなります。

この状態であれば、逆に充電をするメリットも少ないといえます。

ポイント

  • 外出先で急速充電を使うなら、SOCが低い状態で行く
  • 満充電に近い状態では急速充電の効果は薄く、場合によっては普通充電で十分

ご自身の車両情報などもおさえておき、効率のいい外充電を!

急速充電を効率よく行うためには、SOC(バッテリー残量)だけでなく、車両ごとの急速充電の受け入れ能力や電圧 を知っておくことが大切です。

車側の受け入れ能力が低い場合は、高出力の急速充電器を使ってもスピードは変わりません。

どういうことか、例を見てみましょう。

日産のリーフZE1のバッテリー容量40kWhのモデルで考えてみましょう。このモデルは急速充電にかかる時間※が高出力急速充電器(90kW)でも急速充電器(50kW)でも約40分とされています。

出力が異なる場合、高出力で充電する方が早く充電完了するはずです。単純な計算では90kWでは約27分、50kWでは約48分となります。

参考:電気自動車の急速充電にかかる時間はどれくらいか教えて。 | 日産:FAQ/お問い合わせ - よくあるご質問

なぜ想定以上の時間がかかってしまうかの背景には、その車両自体の急速充電の受け入れ能力があります。

90kWなどの高出力での充電を行っても、車両側の受け入れ能力が低い場合には、50kW出力での充電と変わらないということになります。

最近では 1口90kW対応の「マルチ口型急速充電器」など、高性能なタイプが増えてきています。

こうした環境が整ってきているからこそ、自分のEVが最大どれくらいの出力で受け取れるのか を知っておくと、よりスムーズに充電できるようになります。

これを理解せずに高出力の高速充電を行ってしまうと、コスパの悪い充電となりムダに高速充電の料金をしはらってしいますので、しっかりチェックしておきましょう。

また、車種によってはカタログに「総電圧」が載っているものもあります。実は電圧が高い車ほど同じ電流でも出力が高くなり、短い時間でより多く充電できるという特徴があります。

最初は難しく感じるかもしれませんが、充電器や車のモニターに表示される 電流・電圧・SOCの変化を眺めてみると、だんだん“効率の良い充電感覚”がつかめてくる はずです。

急速充電は、ただケーブルをつなぐだけの作業に見えますが、ポイントを押さえると「速さ」と「電費」の両方が大きく変わります。

ぜひ、今回ご紹介した SOCの動き、受け入れ能力、電圧 といった要素を意識しながら、いろいろ試してみてください。

少しの工夫で、あなたのEVライフがもっと快適で楽しいものになっていきます。