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再エネ・発電の仕組み
地熱発電の仕組みを簡単に解説! メリットとデメリットもわかりやすく紹介
2025年12月5日 更新

再生可能エネルギーの一つであり、地球の奥深くに眠る熱エネルギーを利用する「地熱発電」が未来のエネルギーを支える技術として注目されています。
火山活動や地殻変動などから生まれる熱を賢く利用するこの技術は、私たちの生活と環境に大きな影響を与える可能性を秘めています。
特に日本は世界有数の火山国として知られており、その地熱エネルギーを活用した地熱発電が向いているとされています。
そこで今回は、地熱発電の仕組みやメリット、デメリットについて詳しく解説していきます。地熱発電がいったいどんなものなのかわかりやすくご紹介するとともに、再生可能エネルギーの理解も深めていきましょう。
地熱発電の仕組み
地熱発電は、地球内部から放出される熱エネルギーを利用して電力を生成する仕組みです。この仕組みは、地熱エネルギーの取り出し、変換、そして電力の供給という3つの主要なプロセスから成り立っています。
1. 地熱エネルギーの取り出し
地熱エネルギーの取り出しは、地下の地熱貯留層から高温の地熱水や蒸気を採取するプロセスです。
地熱貯留層とは、マグマによって熱せられた高温・高圧の地下水が溜まっている層のことを指します。これらの層は地球の深部に位置し、地球の内部から放出される熱エネルギーを蓄えています。
地熱貯留層の熱源となるマグマ溜まりの温度は650〜1,000℃ほどあり、その寿命は数万年から数十万年以上と考えられています。このような特性から、地熱貯留層は再生可能で永続的なエネルギー源としての可能性を秘めています。地熱貯留層に蓄えられた高温の地熱水や蒸気は、地上に掘削された井戸を通じて取り出され、地熱発電所で利用されます。
2. 地熱エネルギーの変換
地熱エネルギーを電力に変換するために、地熱発電所では様々な技術が利用されています。主な方法としては、蒸気タービンを使用して地熱水や蒸気の圧力を利用し、タービンを回して発電機を駆動する方法があります。また、地熱水を直接蒸気に変換してタービンを回す直接発熱方式もあります。
3. 電力の供給
地熱エネルギーを電力に変換した後は、地域の電力網に接続して電力を供給します。地熱発電所は地域の需要に応じて電力を供給し、再生可能なエネルギー源として地域の電力供給に貢献しています。
地熱発電の仕組みは、地球の内部に蓄えられた熱エネルギーを効率的に利用し、持続可能なエネルギー源として注目されています。
地熱発電の種類
地熱エネルギーを利用して発電する際には、いくつかの方法があります。主な地熱発電の種類は大きく蒸気発電とバイナリー発電に分けられ、シングルフラッシュ発電、ダブルフラッシュ発電、および温水バイナリー発電があります。
蒸気発電
地熱貯留層に存在する200〜300℃以上の高温の天然蒸気を直接利用してタービンを回す方法が、蒸気発電です。
シングルフラッシュ発電
シングルフラッシュ発電は、地下の高温の地熱水を地上に引き上げ、その熱エネルギーを利用してタービンを回し発電する方法です。高温の地下水が地上に引き上げられる際に圧力が急激に低下し、地熱水が瞬間的に沸騰することで蒸気が生成されます。(フラッシュ(減圧沸騰))
この蒸気をタービンに送り、発電機を回して電力を生産します。シングルフラッシュ発電は比較的シンプルで効率が高いとされています。
ダブルフラッシュ発電
ダブルフラッシュ発電も地下の高温の地熱水を利用しますが、シングルフラッシュ発電よりもさらに効率的な方法です。
地熱水を蒸気と液体に分離することで、蒸気をタービンに送り発電する一方で、残りの熱水の熱エネルギーを再利用して二次的な蒸気を生成し、さらに発電します。このように二次的な蒸気も活用することで、より効率的な発電が可能となります。
バイナリー発電
地熱流体が150℃程度以下の中低温で分離した蒸気では直接タービンを回すことができません。そこで、水より沸点が低い媒体(水とアンモニアの混合物など)と熱交換し、この媒体の蒸気でタービンを回す方法がバイナリー発電です。
温水バイナリー発電
バイナリー発電は、地下の地熱水そのものではなく、地熱水から熱を抽出し、それを別の液体(オーガニックランキンサイクル液)に伝達して発電する方法です。地熱水とオーガニック液の熱交換によって、オーガニック液が蒸気化し、その蒸気をタービンに送って発電します。熱交換は、物質同士や物質と環境の間で熱エネルギーが移動するプロセスです。
バイナリー発電は地熱水の蒸気化を利用するため、地熱水の温度が低めでも効率的に発電が可能です。
地熱発電の種類にはそれぞれ特徴があり、地域の地熱水の性質や利用状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。次に、地熱発電のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
地熱発電のメリット
環境にやさしい再生可能エネルギーである

地熱発電のメリットは多岐にわたります。まず、地熱エネルギーは再生可能であり、地球上の熱を利用するため、ほぼ無限に利用可能なエネルギー源です。そのため、環境への負荷が少なく、持続可能なエネルギー供給が期待できます。
さらに、地熱発電はCO2や他の有害物質の排出量が少ないため、地球温暖化や環境汚染の問題を軽減する効果があります。地熱発電所の運用中に排出されるCO2の量は非常に少なく、他の発電方法と比較して環境への負荷が軽減される点が大きなメリットです。
安定的な供給ができる
さらに、地熱発電はエネルギーの安定供給が可能です。地下の熱源を利用するため、太陽光や風力発電のように天候や気象条件に左右されず、安定した発電が可能です。これにより、電力供給の安定性が高まり、停電リスクが低減します。また、地熱エネルギーは基本的に無料で入手できるため、燃料費がかかりません。そのため、長期的に見ても経済的な利益が大きいと言えます。
以上のように、地熱発電は環境への負荷が少ない再生可能エネルギー源であり、エネルギーの安定供給など多くのメリットを持っています。
地熱発電のデメリット
地熱発電には多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。
地熱発電所の建設コストが高い

まず、地熱発電所の建設には高額な投資が必要です。地下の地熱エネルギーを利用するための施設や設備は高度な技術と設計が必要であり、そのためには多額の資金が必要となります。
また、地熱エネルギーを利用するためには、地下の地熱貯留層へのアクセスが必要となるため、地形や地質条件に制約があります。地下1,000~3,000mという深さまでの掘削作業も必要になります。これらの要因から、地熱発電所の建設は技術的な難易度が高く、コストがかかるというデメリットがあります。
設立できる場所に制限がある
さらに、地熱発電はその利用可能な地域に制約があります。地下に豊富な地熱エネルギーがある地域でなければ建設できないということもありますが、同時にこういった地熱発電がおこなえる地域は国立公園であったり温泉地にもなっていることがあります。ここで地熱発電所の建設を行おうとすると、景観を損ねるといった問題も起きてしまいます。
発電効率が高くない
また、地熱発電は発電効率にも制約があります。地下から採取できる蒸気のエネルギー密度の関係上、大量な発電量は見込むことができません。先ほどお伝えしたように建設コストは大きいことを踏まえますと効率がいいとは言えません。
以上のように、地熱発電は多くのメリットとともにデメリットも存在します。技術的な課題やコスト、建設できる土地の制約などが課題となりますが、これらの課題に対応する技術開発や運用管理の向上が進められることで、地熱発電の活用がより進められるかもしれません。
地熱発電の仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説してきましたが、日本における地熱発電の現状や今後の展望、そしてまとめについても見ていきましょう。
日本における地熱発電の現状

日本は地熱資源に恵まれた国であり、地熱発電の導入が進んでいます。日本は世界で第3位の地熱資源量(2,347万kW)を持っているため、資源が豊富でとても相性の良い再生可能エネルギーであることがわかります。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁 2030年における再生可能エネルギーについて 2021年4月7日
しかし資源量は多いものの、実際に発電量として確保できている地熱発電設備容量は約60万kWにとどまっています。日本よりも資源量が少ないケニア(700万kW)では68万kWの地熱発電設備容量を持っており、より地熱資源を活用して電力を作っているといえます。
このように資源をうまく活用できていない背景には、開発のリスクやコスト、また温泉資源などへの影響がないか心配する声、法規制や開発認可手続きの煩雑さなどのさまざまなハードルがあると考えられます。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁 もっと知りたい!エネルギー基本計画④ 再生可能エネルギー(4)豊富な資源をもとに開発が加速する地熱発電
日本における地熱発電の現状を見ると、持続可能なエネルギー源としての可能性が十分にあるといえますが、今後の技術革新や新たな地熱発電所を建てるための政策の推進が重要です。日本にある豊富な地熱資源を活かしながら、地球環境に配慮したエネルギー政策の実現を目指すために、地熱発電のさらなる普及と効率化が求められています。
地熱発電の今後の展望

地熱発電は再生可能エネルギーの一つとして注目されていますが、その将来展望はさらに広がっています。特に、熱交換器や蒸気タービンの改良、地熱貯留層の探査技術の向上などが進むことで、地熱発電の利用がさらに拡大する可能性があります。
日本はGX(グリーントランスフォーメーション)の目標として2030年度において温室効果ガス46%削減を目指すこと、2050年までに温室効果ガス排出をゼロにする「カーボンニュートラル」を掲げています。この実現には地熱発電のような再生可能エネルギーの普及も非常に重要な役割を担うことになります。
まとめ
地熱発電は再生可能エネルギーの中でも注目される技術であり、持続可能なエネルギー源であること、地域における電力供給の安定化、環境への負荷が低いことなどがメリットとして挙げられます。一方で、建設コストの高さや建設可能地域の制約などのデメリットも存在します。
今後は技術の進化や国際的な協力により、地熱発電のさらなる普及と効率化が期待されます。持続可能なエネルギー社会の実現に向けて、地熱発電は重要な役割を果たしていくことでしょう。



