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EVと暮らしのエネルギー
V2Xとは?車とあらゆるものをつなぐ仕組み|V2Hとの違いもわかりやすく解説
2026年5月15日 更新
電気自動車(EV)について調べていると、「V2X(ブイツーエックス)」という言葉を見かけることがあります。
ただ、いざ調べてみると専門的な解説が多く、
「結局どういう意味なの?」「V2HやV2Gと何が違うの?」
と、かえって分かりにくいと感じた方も多いのではないでしょうか。
V2Xとは、簡単にいうと電気自動車とさまざまなものをつなぐ仕組みのことです。 一見むずかしそうに見えますが、実は「家に電気を送る」「電気代を抑える」といった、私たちの生活にも関わる技術です。
この記事では、
- V2Xの意味をできるだけシンプルに
- V2H・V2Gとの違い
- どんなことができるのか
を、初めての方でも理解できるようにわかりやすく解説していきます。
V2Xとは?意味をわかりやすく解説
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V2X(ブイツーエックス)とは、「Vehicle to X」の略で、クルマ(Vehicle)とさまざまなもの(X)をつなぐ技術のことです。
ここでいう「X」には、たとえば次のようなものが含まれます。
- 他のクルマ
- 信号や道路などのインフラ
- 家や電力ネットワーク
- インターネットやサービス
つまりV2Xとは、クルマが単体で動くだけでなく、周囲とつながりながら情報や電気をやり取りする仕組みと考えるとイメージしやすいでしょう。
これまでは、クルマはあくまで「移動するための乗り物」でしたが、V2Xによってさまざまなものと連携できるようになることで、
- 事故の防止
- 渋滞の緩和
- 電気の有効活用
といった、新しい価値が生まれています。
一見むずかしく感じる言葉ですが、ポイントはシンプルで、「クルマがいろいろなものとつながるようになる技術」と覚えておけばOKです。
V2Xの主な接続形態一覧
V2Xにはさまざまな接続パターンがあります。代表的なものをまとめると以下の通りです。
■ 通信系(情報のやり取り)
- V2V(Vehicle to Vehicle) 車と車が通信し、位置や速度などの情報を共有する
- V2I(Vehicle to Infrastructure) 信号機や道路設備と通信し、交通状況などを取得する
- V2P(Vehicle to Pedestrian) 歩行者のスマートフォンなどと連携し、安全性を高める
- V2N(Vehicle to Network) インターネットと接続し、渋滞情報や天気などを取得する
■ 電力系(電気のやり取り)
- V2H(Vehicle to Home) 車の電気を家庭で使う(停電時など)
- V2G(Vehicle to Grid) 電力網とつながり、電気の供給・調整を行う
- V2B(Vehicle to Building) ビルや施設に電気を供給する
- V2L(Vehicle to Load) 家電や機器に直接電気を供給する
このようにV2Xは、「情報をやり取りする仕組み」と「電気をやり取りする仕組み」の大きく2つに分けて考えると理解しやすくなります。
V2V(Vehicle to Vehicle):車同士でつながる
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V2Vは、クルマ同士が通信し、お互いの情報を共有する仕組みです。
たとえば、近くを走っている車の
- 位置
- 速度
- 進行方向
といった情報をリアルタイムでやり取りすることで、周囲の状況をより正確に把握できるようになります。
これにより、ドライバーからは見えにくい場面でも危険を察知しやすくなり、事故の防止や安全性の向上につながります。
具体的にできることとしては、見通しの悪い交差点で接近している車を事前に検知したり、急ブレーキをかけた車の情報を後続車に共有したりといったものがあります。また、渋滞の発生をいち早く把握することにも役立ちます。
このようにV2Vは、クルマ同士が「お互いに情報を教え合う」ことで、より安全でスムーズな走行を実現する技術です。将来的には自動運転との連携も期待されており、交通事故の大幅な減少にもつながると考えられています。
V2I(Vehicle to Infrastructure):道路や信号とつながる
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V2Iは、クルマと信号機や道路設備などのインフラが通信する仕組みです。
たとえば、信号の状態や切り替わるタイミング、渋滞情報、工事情報などをクルマがリアルタイムで受け取ることで、周囲の状況をより正確に把握できるようになります。
これにより、ドライバーは先の状況をあらかじめ知ることができ、無駄な加減速を減らしたり、スムーズな運転につなげたりすることができます。また、安全運転のサポートにもつながるのが特徴です。
具体的には、信号がもうすぐ赤に変わることを事前に知らせたり、渋滞しているルートを避けるようナビゲーションを最適化したりといった活用が考えられます。さらに、事故や道路規制の情報を早めに把握することで、危険を回避しやすくなります。
このようにV2Iは、クルマと道路インフラが情報を共有することで、安全性と効率の高い運転を実現する技術です。今後はスマートシティの普及とともに、より重要な役割を担っていくと期待されています。
V2P(Vehicle to Pedestrian):歩行者とつながる
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V2Pは、クルマと歩行者が通信する仕組みです。
たとえば、歩行者がV2Pに対応したスマートフォンを持っていることで、車側がその位置情報を把握し、接近を検知できるようになります。
これにより、ドライバーが気づきにくい死角にいる歩行者や、自転車の存在を事前に認識できるため、事故のリスクを減らす効果が期待されています。
特に、見通しの悪い交差点や夜間などでの安全性向上につながる技術です。
V2N(Vehicle to Network):ネットワークとつながる
V2Nは、クルマとインターネットなどのネットワークを接続する仕組みです。
クルマそのものをインターネット端末とみなす考え方をベースとし、通信を通じて、渋滞情報や天気、事故情報などをリアルタイムで取得できるほか、ナビゲーションの精度向上や最適なルート案内にも活用されます。
また、ソフトウェアのアップデートや各種サービスとの連携も可能になり、クルマが単なる移動手段ではなく、常に最新の情報とつながる存在へと進化していきます。
V2XとV2Hの違いは?
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V2HとV2Xは似ている言葉ですが、V2HはV2Xに含まれる仕組みのひとつです。
V2H(Vehicle to Home)は、電気自動車と住宅をつなぎ、クルマに蓄えた電気を家庭で使えるようにする仕組みです。
特に、停電時の非常用電源として活用できる点が特徴で、電気のやり取りに関する技術といえます。
一方でV2Xは、「Vehicle to Everything」の略で、クルマとさまざまな対象をつなぐ技術の総称です。車同士や信号、ネットワークなどと通信することで、安全性や利便性を高める役割があります。
つまり、V2Hが「家と電気をやり取りする技術」であるのに対し、V2Xは「クルマとあらゆるものをつなぐ広い概念」です。
V2Hについて詳しくはこちらのコラムでもご紹介していますので、是非ご参考ください。
V2Hのほかにも、電気に関わる仕組みとしては次のようなものがあります。
V2G(Vehicle to Grid):電力網とつながる
V2Gは、電気自動車と電力会社の送配電網(グリッド)をつなぐ仕組みです。
車にためた電気を電力網へ供給したり、逆に電気を受け取ったりすることで、電力の需給バランスを調整する役割があります。
たとえば、電気の需要が高い時間帯にEVの電力を活用することで、電力の安定供給に貢献できるといった特徴があります。
V2Gについての詳細はこちらのコラムでも解説していますので、ご参考ください。
EVeeを運営するMCリテールエナジー株式会社では、関係各社との協力から、V2Gを社会実装する実証事業も実施しています。一つ一つのEVは小さなバッテリーでしかありませんが、多くを束ねてコントロールすることでより多くの電源リソースとして扱うことができます。
MCリテールエナジー株式会社では複数制御したEVを活用することで電力市場での取引も実施しており、V2G技術の社会実装と経済性の確保に取り組んでいます。
参考:個人所有のEVを活用したV2G実証を開始 ~ 複数台同時制御で地域電力ネットワークの安定へ貢献 ~
V2B(Vehicle to Building):ビルとつながる
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V2Bは、電気自動車とビルや商業施設などの建物をつなぐ仕組みです。
基本的な考え方はV2Hと似ており、車に蓄えた電気を建物内で活用できるのが特徴です。
オフィスビルや商業施設の電力として利用することで、ピーク時の電力使用を抑えたり、災害時のバックアップ電源として活用されたりします。
V2Bについて詳細はこちらのコラムでご案内しております。ご参考ください。
V2L(Vehicle to Load):家電や機器とつながる
V2Lは、電気自動車にたまった電気を、家電や機器に直接使えるようにする仕組みです。
V2Hのように家全体へ電気を供給するのではなく、コンセント感覚で個別の機器に電気を供給するのが特徴です。
たとえば、
- アウトドアで電気ケトルや照明を使う
- 工事現場で電動工具を動かす
- 停電時にスマートフォンや家電を動かす
といった使い方ができます。
このようにV2Lは、特別な設備がなくても比較的手軽に使えるケースが多く、日常から非常時まで幅広く活用できるのが特徴です。
クルマを「持ち運べる電源」として使えるイメージを持つとわかりやすいでしょう。
V2Xで何が変わる?広がるクルマの役割とメリット
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ここまで、V2Xの基本的な考え方と、V2V・V2I・V2P・V2N・V2Hなどのさまざまな接続形態について見てきました。
V2Xの大きな特徴は、これまでのクルマのように車両単体のセンサーやカメラだけに頼るのではなく、クルマの外とつながることで情報の幅を広げられる点にあります。
従来の技術では、見通しの悪い交差点の先や、死角にいる歩行者、離れた場所で発生している渋滞などは把握しきれないケースもありました。 しかしV2Xによって、クルマ同士や信号、ネットワークなどとリアルタイムで情報をやり取りできるようになることで、これまで見えなかった情報までカバーできるようになります。
その結果として、
- 事故のリスク低減
- スムーズな交通の実現
- ドライバーの負担軽減
といった、安全性と利便性の向上が期待されています。
さらに、V2HやV2Gのように電気のやり取りを含めることで、クルマは単なる移動手段にとどまらず、エネルギーを支える存在としての役割も持つようになっています。
このようにV2Xは、クルマの価値を大きく広げ、交通・エネルギー・生活といったさまざまな分野にメリットをもたらす技術といえるでしょう。
V2Xの社会実装に向けた国内での取り組み
V2Xの実装に向けて、日本国内でも様々な取り組みが行われてきました。
NTTドコモによるリアルとバーチャル両面での通信実証
NTTドコモは、C-V2Xを使った協調型自動運転の実用化に向けて、千葉県柏市の柏の葉に実証環境を整え、実車を使った試験とシミュレーションの両方で検証を進めました。
実証では、テストコースとドコモR&Dセンタをつないで遠隔操作を行い、信号の色や残秒数、周辺の車両や歩行者などの情報を通信で補うことで、映像だけでは見えにくい状況でも安全に運転しやすくなることを確認しました 。
また、5.9GHz帯を使ったV2V通信の伝搬試験も行い、市街地に近い環境でどの程度つながるかを測定し、実用に向けた基礎特性を把握しています 。
さらに、現実の街を再現したシミュレータも開発し、多数の車両が走る状況でC-V2Xの通信性能を評価できるようにしています 。
参考:C-V2Xを活用した協調型自動運転に向けたドコモの取組み | 企業情報 | NTTドコモ
総務省の地方自治体を巻き込んだ実証事業
また、総務省もV2Xを社会実装するために必要な通信に関する実証を重ねています。
令和6年度には東名高速道路の一部区間において、携帯電話事業者のネットワークを活用したV2Nに係る車との通信状況を測定、その実測値の評価を行いました。
その結果を踏まえて、令和7年度にはさらに以下のように深堀りし、ユースケースを掲げて実証を行っています。
自動運転の常時接続が確保できるか
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トンネル内や山間地などでの安定した通信が行えるか、ひとつの通信塔から車が離れていった際にどのくらいの距離で次の通信塔に通信接続を引き渡すかを検証しています。
安定的で円滑な周辺情報の伝送
周囲の信号機の状況、自動運転車両の情報伝送の確実性を確認。周辺環境情報を基にした危険回避行動の連携と実装についても検証しています。
経済性の実証
一人の作業者が複数車両の同時運行を成立させるための要件の検証をしています。また、インフラの共用化や量産化ができるかの確認もされました。
総務省はこれら実証を各都道府県と共に取り組み、V2Xの通信面での堅牢性や安定性を高めるべく事業を推進しています。
参考:自動運転の社会実装に向けた情報通信インフラに関する総務省の取組状況 総務省 令和7年6月23日
海外における自動運転・V2Xの事例
アメリカで進むV2Xと自動運転の事例
アメリカでは、自動運転とV2X(車と信号・道路がつながる技術)をセットで広げる動きが進んでいます。
代表例がWaymoで、サンフランシスコやロサンゼルスでは、すでに無人のEVタクシーをアプリで呼べるサービスが走っています。イメージとしては「Uberの自動運転版」です。
さらに、米国交通省もV2Xの普及を進めており、信号の変化や事故・工事情報を車に共有することで、安全でスムーズな走行を目指しています。
こうした取り組みにより、「車を持たずに必要なときだけ呼ぶ」という新しい移動スタイルも現実味を帯びてきました。
今後は、「自分で運転するEV」に加えて、「呼べるEV」「つながるEV」が当たり前になっていくと考えられます。
韓国で進む自動運転バスとV2Xの実証

韓国では、深夜や早朝の交通を中心に、自動運転とV2Xの実用化が進んでいます。
ソウルでは、地下鉄が動かない時間帯に自動運転バスの実証が行われており、基本的な運転はシステムが担当し、難しい操作のみ人が補助する「約8割自動運転」で運行されています。
また、K-Cityという専用テストコースでは、自動運転やV2Xの検証が進められており、信号情報などを車に共有することで、より安全でスムーズな走行を実現しています。
こうした取り組みは、少子化による人手不足の解消と公共交通の維持を目的に、将来的な本格普及を見据えて進められています。
公共交通から進む欧州のV2Xと自動運転
欧州では、環境や公共交通を重視しながら、自動運転とV2Xの導入が進められています。
ドイツやフランスなどでは、自動運転バスや小型シャトルを使い、病院や商業施設までの「ラストマイル」を補う実証が進行中で、高齢者や移動困難者の移動支援に活用されています。
また、欧州委員会が中心となり、V2Xの共通ルール整備や実証を推進。信号や渋滞、事故情報を車に共有することで、安全でスムーズな交通の実現を目指しています。
欧州の特徴は、「自動運転そのもの」よりも、環境負荷の低減や公共交通の充実を重視している点で、社会全体での活用を見据えて着実に普及が進められています。
参考:「海外における自動運転・V2Xの事例ご紹介」2025年 12月17日 特定非営利活動法人 ITS Japan 専務理事 山本昭雄
V2Xの実用化における課題
V2Xは安全性や利便性を大きく高める技術として期待されていますが、実用化・普及に向けてはいくつかの課題も残されています。
多大なコストのかかるインフラ整備
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まず大きいのが、インフラ整備のコストです。V2Xを活用するには、信号機や道路側に通信機器を設置する必要があり、全国規模で整備するには多くの時間と投資が求められます。
また、通信規格の統一も重要な課題です。国や地域によって採用されている規格が異なるため、車両メーカーやインフラ側での標準化が進まないと、広域での利用が難しくなります。
通信障害時の対応準備
V2Xは実装が進むほど、その基盤に依存した社会へのシフトが起こっていきます。
つまり、通信の障害が発生した場合の対応はしっかりと整備しなくてはなりません。
障害発生時には交通システムが混乱しないように、相応の対策が求められます。もしも障害が頻発してしまった場合には、その発生地域への不信感が強まるなど影響範囲も大きくなってしまいます。
通信セキュリティの強化
さらに、通信の信頼性やセキュリティも無視できません。
リアルタイムで情報をやり取りするV2Xでは、通信の遅延や誤情報が事故につながるリスクもあるため、高い精度と安全性が求められます。
このほかにも、制度整備や責任の所在の明確化など、社会実装に向けて解決すべき課題は多くあります。
こうした課題を一つずつクリアしていくことで、V2Xはより身近な技術として普及していくと期待されています。
V2Xが描くモビリティの未来
V2Xは、車と社会インフラがつながることで、安全性や利便性を大きく変える可能性を持った技術です。
アメリカや韓国、欧州などではすでに実証や一部実用化が進んでおり、日本でも今後の普及が期待されています。一方で、インフラ整備や制度面などの課題もあり、すぐにすべての地域で利用できるわけではありません。
それでも、自動運転やEVの普及とともに、V2Xは着実に社会に広がっていくと考えられます。 将来的には、「信号や道路とつながりながら走る車」が当たり前になる時代が訪れるかもしれません。



