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再エネ・発電の仕組み
水力発電の仕組み、メリットとデメリットを分かりやすく解説
2025年11月28日 更新

地球環境にやさしいエネルギーとして注目を集める再生可能エネルギー。その中でも水力発電について、実際にどのような仕組みで電気を生み出しているのかご存じでしょうか。
非常に大きなダムから水が放出されている様子などを見たことのある方は多いかと思いますが、今回はより詳しく、水力発電の仕組みやメリット、デメリットについてご紹介していきます。
水力発電の歴史は?

世界で最初の水力発電はイギリスのウィリアム・ジョージ・アームストロングによって行われ、1878年(明治11年)に彼は自宅の照明用電力を得るために1km離れた場所に水力発電機を設置しました。その後、1881年(明治14年)にはエジソンがナイアガラの滝の近くに水力発電所を建設し、これが水力発電所の建設ラッシュを引き起こしました。
日本でも1888年(明治21年)以降、水力発電所の建設が相次ぎました。最初は紡績所や鉱山などの自家用発電所でしたが、電力会社の営業用の発電所としては、1891年(明治24年)に運用を開始した琵琶湖疏水の落差を利用した「蹴上水力発電所」(水路式、直流、160キロワット)が最初に建設されました。
水力発電の仕組み

水力発電は、高所に貯めた水を落下させることで得られる位置エネルギーを利用して発電を行います。
具体的には、ダムで貯めた水が水路を通って発電所に送られ、落下する水の持つ運動エネルギーで水車を回転させます。この水車につながっている発電機が回転することで電気が生み出されます。発電機は電磁誘導を利用して回転から電気を生み出しています。
電磁誘導とは、導線やコイルなどの導体を通る磁束が変化すると、その導体に電位差(電圧)が生じる物理現象です。この電位差によって生じる電流を誘導電流と呼びます。例えば、導線に接続されたコイルを磁石で回転させると、コイルを通る磁束が変化するため、誘導電流が発生します。
このようにして水が落下する位置エネルギーを利用し、水車の開店から発電機が電気を生み出すことができるのです。
水力発電に使われた水は川に戻されるため、水資源を一時的に利用するだけですから、水力発電を行うからといって水がなくなってしまうということはありません。
構造物による3つの分類
水力発電は、構造物により「ダム式」「水路式」「ダム水路式」の3つに分類できます。

- ダム式:こちらは河川などにダムを建設して水を貯められるようにしてから、貯水量によって生まれた落差を利用して水を流して発電する仕組みです。貯水量によって水面の高さが変動しますので、発電量も伴って変動します。
- 水路式:河川の下流に発電所を設置し、上流には取水堰を設けて流れを分岐させます。その後、本来の河川の流れよりも緩やかな勾配の水路を引き、発電所において急勾配で流水・落水させて水車を回転させ発電した後、水は元の河川に戻されます。
- ダム水路式:ダム式と水路式両方を採用した構造です。貯水をする場所と発電所を別の場所に設置できるため、場所の要件をクリアしやすいことが特徴です。
水の利用法での4つの分類
水力発電設備は水の利用方法によっても「流れ込み式(自流式)」「調整池式」「貯水池式」「揚水式」の4つに分類されています。
- 流れ込み式(自流式):流れ込み式(自流式)は、河川の流れをそのまま引き込んで利用する方法です。この方式は出力調整が難しいですが、河川の流れがある限りはいつも発電できるため、通常はベースの電力需要を担うことが多いです。
- 調整池式:調整池式は、電力需要が少ないときにダムを用いて水を貯めておき、需要が多くなるときにその水を流すことで、電力の需要変動に対応する方式です。調整池式は比較的小規模なもので日間・週間単位の負荷調整に用いられます。
- 貯水池式:貯水池式は調整池式と同じく、電気の需要に応じて水を流して発電する方式ですが、季節間で調整を行うためのダムを設置する大規模なものです。
- 揚水式:揚水式は、発電所の下流と上流にそれぞれダムを設置し、両ダム間で水の移動を利用して電力需要の調整を行う方式です。電気の需要が少ないときには余っている電力を利用して上流の調整池に水をくみ上げ、需要が高くなるとその水を利用して発電量を増やします。揚水式は一種の水力を利用した蓄電池とも言えます。
水力発電のメリット
ゼロエミッションで環境にやさしい
やはり水力発電の大きなメリットの一つとして挙げられるのは、発電時に温室効果ガスの排出がないために環境に非常にやさしい発電方式であることです。
再生可能エネルギーである

再生可能エネルギーというと、最近では主に太陽光や風力が注目されがちですが、水力も再生可能エネルギーの重要な一つです。水力発電では、発電に使った水のエネルギーは自然の循環によって再生されます。具体的には、発電に使用された水が蒸発して雨として再び地上に降り、川や湖に戻ってエネルギーを持つことから、水力発電は再生可能なエネルギー源として位置づけられます。
再生可能エネルギーの中で水力発電が特に安定的なのは、水が基本的に枯渇することがなく、降水がある限りなくならないからです。また、水は貯蔵可能であり、必要な時に必要な量だけ利用することができます。このため、太陽光や風力発電が天候に依存するのに対し、水力発電は比較的安定的に発電が可能です。
日本に適した発電方式
日本の地形は、山が多く起伏に富んでいます。そのため、高低差を利用して発電する水力発電には最適な環境です。
電力需要に柔軟に対応しやすい
貯水式や揚水式の水力発電では、電力需要の増減に柔軟に対応できます。水を貯めておいたり、必要に応じて水を流すことで発電量を調整したり、発電を停止したりすることが容易です。このため、必要なエネルギーを素早く取り出すことができるという特徴があります。
水力発電のデメリット
環境への影響
ダム建設により、河川の流れが変わり、生態系や魚類の回遊に影響を与えることがあります。また、大規模なダム建設により、周辺の土地が浸水することがあります。これによって生態系や農地が失われる可能性があります。
地震や洪水への脆弱性
地震や洪水が発生すると、ダムが破壊される可能性があります。これにより周辺地域に甚大な被害が及ぶことがあります。ダムが壊れてしまうほどの大災害は頻度こそかなり少ないと想定されますが、起きてしまった時の被害は計り知れません。そういったリスクが生まれてしまうということです。
周辺の生態系への影響
ダム建設によって河川などに生息する魚の生息環境が変化し、生態系に影響を与えることがあります。特に河川の魚類の回遊や産卵に影響を及ぼすことがあります。人間だけではなく、周辺の生物への影響も考慮しなくてはいけません。
巨額な建設コストとメンテナンス費用
大規模な水力発電所やダムの建設には多額の投資が必要であり、また定期的なメンテナンスも費用がかかります。また、巨大なダムの建設などにはそれだけ二酸化炭素の排出が想定されますので、水力発電設備の建設にあたり温室効果ガスを排出してしまうというリスクもあります。
これらのデメリットは水力発電を導入する際に考慮すべき点であり、環境や地域社会への影響を最小限に抑えるための工夫が求められています。
水力発電の今後

水力発電は日本に適したクリーンエネルギーの発電方法であり日本を支えてきたことは間違いありません。しかし、大規模な水力発電所の建設が進むほどに、適した候補地が少なくなってきていることも現状です。大きな水力発電所を作れそうな土地には、すでに水力発電所ができているということです。
そこで今後は小規模なマイクロ水力発電の設置を進めていくことになります。マイクロ水力発電は大規模な河川を利用する水力発電所とは異なり、上下水道や農工業用水など、エネルギーとしては活用されていないすでにあるインフラや水路設備などを活用した発電になります。
小さな規模であるために設置段階でも二酸化炭素の排出を抑えることができます。
参考:マンガでわかる 電気はあってあたりまえ? 経済産業省 資源エネルギー庁
大きな水力発電設備の新設は難しくなっていますが、すでに水が流れているエネルギーのある場所はたくさんあります。より小さな規模で水車を設置するなど、日本でもさらに水力発電を増やしていけるでしょう。
今回は水力発電の仕組みやメリット・デメリットを紹介してきました。再生可能エネルギーの普及について少しでも意識していただけると嬉しいです。


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